近視の進行を抑える点眼薬
『アトロピン点眼薬0.01%』
近視の人口は世界的に増加しており、このまま増加し続けた場合、世界の近視人口は2050年には約50億人になるという予測が報告されています1)。この近視人口の世界的な増加傾向は約50年前から始まり、特にアジア系に多いことが知られています。香港、台湾、シンガポールでは、18歳における近視有病率が80%を超えたことが報告されました2)。2019年8月に発表された慶応大学の研究で、東京都内約1400人の小中学生を調査したところ、小学生の約 76.5%、中学生の94.9%が近視になっていることが判明しました3)。
近視が発症・進行する原因の詳細なメカニズムはいまだ不明ですが、「遺伝的要因」と「環境要因」の両方が関与すると考えられています。環境要因として近業作業の増加、屋外作業の減少が報告されています。スマホやパソコン等のデジタルデバイスに囲まれている現代社会の環境が近視の急増原因の一端を担っていると感じざるを得ません。
当院では、アトロピン点眼薬0.01%を1日1回点眼することによって近視の進行を抑制する治療を行っております。
アトロピン点眼薬0.01%は、小児期の近視の進行を軽減させることを目的にアトロピンを0.01%配合させた点眼薬で、Singapore National Eye Centre(SNEC:シンガポール国立眼科センター)の研究に基づいて開発されています。
- 1)Holden BA, et al. : Global Prevalence of Myopia and High Myopia and Temporal Trends from 2000 through 2050. Ophthalmology 2016
- 2)Rudnicka AR, et al. : Global variations and time trends in the prevalence of childhood myopia, a systematic review and quantitative meta-analysis: implications for aetiology and early prevention. The British Journal of Ophthalmology 2016
- 3)Erisa Y, et al. : Current Prevalence of Myopia and Association of Myopia With Environmental Factors Among Schoolchildren in Japan. JAMA Ophthalmol 2019
- 4)Yam J,Li FF, Zhang X, Tang SM, Yip B, Kam KW, Ko S, Young A, Tham C, Chen LJ, Pang CP : Two-Year Clinical Trial of the Low-Concentration Atropine for Myopia Progression (LAMP) Study: Phase 2 Report
治療対象者
- 6歳~12歳までの方
- 中程度(-6D)以下の近視の方
- 3ヶ月に1回定期的な通院が可能な方
近視の進行を抑制することが大切な理由
子どもの近視は、主に眼球が楕円形に伸びてしまう(眼軸長が伸びる)ことで、ピント位置がずれることにより生じます。近くを見ることが習慣化してしまうと近視になりやすく、一度眼軸長が伸びてしまうと戻ることがありません。
そのために眼軸長の伸びを抑えることが、近視の進行を抑制するためには重要となります。
低濃度アトロピン(マイオピン)には眼軸長を伸展させる働きに関連するムスカリン受容体をブロックする効能があると言われています。
治療に関しての注意点
- 点眼薬1本(5㎖)は両眼用で1ヶ月間の使いきりです。
感染症のリスクがあるため、開封してから1ヶ月後には残量があっても必ず破棄して下さい。 - 点眼薬のみの受け取りは出来ません。必ず診察が必要です。
- 保険適用外(自費診療)となるため保険診療と同日に処方が出来ません。
- 3ヵ月に1回必ず検査と診察が必要です。
- アトロピン点眼薬0.01%は近視の症状を有しているお子様(6歳から治療可能)への処方が推薦されており、処方の際は最低2年間使用を継続することをおすすめします。
治療の流れ
1.初回
検査と診察を行ったうえで、アトロピン点眼薬0.01%を処方し、1ヵ月経過観察を行います。
2. 1ヵ月後
1ヵ月の経過観察後、アトロピン点眼薬0.01%を3ヵ月分処方します。
3. 以降、3ヵ月ごと
3ヵ月ごとにアトロピン点眼薬0.01%を処方します。
定期的に視力、屈折値や眼軸長等を検査して治療を評価します。
ある程度の期間点眼を続けていても近視の進行が見られる場合は、アトロピン点眼薬0.025%への変更を考慮し、適切だと判断した場合は0.01%製剤から0.025%製剤の点眼薬に変更します。
※0.025%製剤は0.01%製剤と比べ、より優れた近視進行抑制効果を示すことが確認されていますが、0.01%製剤よりもまぶしさが感じやすくなる場合があります。
治療費用
0.01%製剤での治療費用
初回治療費用 | アトロピン点眼薬0.01% 1本 + 検査・診察 マイオピン(@3,200円×1本)+ 検査・診察代 1,800円 |
5,000円(税込) |
---|---|---|
2回目以降の 治療費用 |
アトロピン点眼薬0.01% 3本 + 検査・診察 マイオピン(@3,200円×3本)+ 検査・診察代 1,800円 |
11,400円(税込) |
0.025%製剤に切り替えた場合の治療費用
初回治療費用 | アトロピン点眼薬0.025% 1本 + 検査・診察 マイオピン(@3,800円×1本)+ 検査・診察代 1,800円 |
5,600円(税込) |
---|---|---|
2回目以降の 治療費用 |
アトロピン点眼薬0.025% 3本 + 検査・診察 マイオピン(@3,800円×3本)+ 検査・診察代 1,800円 |
13,200円(税込) |
※クレジットカード(VISA・Master・JCB・AMEX)のご利用が可能です。
※3回目の治療以降は、3ヵ月ごとの定期的な通院が必要です。
よくあるご質問
Q
どれくらいの期間、治療を継続したらいいのでしょうか?
A
全員に効果があるわけではありません。まず2年間は治療を継続して頂き、効果をみるというのが望ましいと考えています。
Q
点眼を中止するとどうなりますか?
A
2年で点眼を中止した状態で1年間経過をみるとわずかにリバウンドがあったという結果がありますが、再び点眼を開始するとある程度の効果が期待できると言われています。
Q
視力は回復しますか?
A
基本的には近視が進まないようにする治療であり、視力を回復する治療ではありません。近視の進行を防止し、視力が悪くならないようにするための治療とご理解ください。
Q
副作用はどんなことがありますか?
A
点眼後7~8時間ぐらいまぶしさを感じたり、ぼやけることがありますが、必ず就寝前に点眼して頂ければ、翌日の生活には特に問題ありません。まれに結膜アレルギーが起こることがございますが、副作用がほぼ皆無の良好な近視抑制用点眼液と言われています。
Q
全身への影響はありますか?
A
現在のところ報告されておりません。
Q
13歳以上であったり、近視が強いとこの治療は受けられないのでしょうか?
A
可能です。近視の進行が著しい年齢が6歳から12歳ということであり、それ以前や以降の年齢に効果がないとは報告されておりません。本人様や家族の方の希望があれば処方は可能です。
近視遺伝子チェック
遺伝子検査とは遺伝子を解析し、親から子供に受け継がれる体質や将来の病気リスクを調べる検査です。
「近視遺伝子チェック」では、近視に関わる様々な遺伝子を解析して、遺伝的に近視になるリスクを5段階評価でお知らせします。
製品名 | 近視遺伝子検査キット |
---|---|
当院での販売価格 | 13,000円(税込) 参考価格:15,000円(税込) |
検査説明 | キット内の綿棒で頬の内側をこすって検体を採取し、指定の検査機関に郵送して検査を行います。 約4週間でご自宅に判定結果が郵送されます。 |
注意事項
- 本遺伝子検査は、遺伝的な体質を判定する消費者向け遺伝子検査です。
- 診断用ではございません。
- 医師等の指導がある場合は、当該指導に従ってください。
- 未成年の方の実施には、保護者の方の同意が必要となります。
ロートクリアビジョン
ジュニアEX®
近視進行予防のサプリメントです。
クロセチン含有成分が近視進行抑制に関わる遺伝子「ERG-1」の発現を増やし、近視の原因となる眼軸長の伸びを抑制することがわかってきており、注目を集めております。
ロートクリアビジョンジュニアEX®にはクチナシ由来の色素成分「クロセチン」が7.5mg含有されてます。
6才から服用でき、味は無味無臭の小粒なソフトカプセルです。すぐに結果はでないため、6か月くらい飲み続けることが必要です。
近視が良くなるわけではなく、進行しますが、その進行の程度を抑制する効果が期待されています。
製品名 | ロートクリアビジョンジュニアEX® |
---|---|
内容量 | 1箱30粒(約1ヶ月分) |
価 格 | 3,240円(税込)/ 1日あたり108円(1粒) |
- ※ご購入には診察が必要となります。
- ※ロートクリアビジョンジュニアEXⓇは眼科でのみ販売が許可されています。
ネット販売されている「ロートクリアビジョンジュニア」は、「クロセチン」の含有量が異なり、近視進行抑制の治験はされていませんのでご注意ください。